投稿日: 2026年3月11日
※こちらのブログは通信業界歴15年の防災士が書いたものです※
本日3月11日は、東日本大震災から15年の節目の日です。
2011年の震災では、固定電話や携帯電話を含む通信インフラが大きな被害を受け、安否確認や情報収集が困難になる状況が広範囲で発生しました。
当時、「携帯電話は無線だから災害でも使える」と考えていた人も少なくありませんでした。しかし実際には、基地局の停止や通信集中による輻輳により、多くの地域で通信がつながりにくい状況が発生しました。
それから15年。
通信インフラは災害対策を強化し、復旧体制や設備は大きく進化しています。
一方で、通信が社会インフラとしてさらに重要になった現在、災害時の通信リスクはむしろ拡大している側面もあります。
本記事では、東日本大震災の通信障害の実態を振り返りながら、現在の災害対策の進展と、企業BCPの観点で重要となる「通信冗長化」の考え方について解説します。
東日本大震災で何が起きたのか ― 通信障害の実態
2011年3月11日の東日本大震災では、通信インフラにも深刻な被害が発生しました。
固定電話では、津波による電柱や通信ケーブルの流出、通信ビル設備の損壊などにより、最大で約100万回線が不通となりました。通信事業者3社合計では、約190万回線が被災したとされています。
また、携帯電話の基地局も大きな影響を受けました。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなど各社を合わせると、最大で約2万9000局の基地局が停止しました。
さらに問題となったのが「通信の集中」です。
震災直後には多くの人が安否確認のために電話をかけたことで、回線が混雑する輻輳(ふくそう)が発生。
その結果、通信事業者は以下のような大規模な通信規制を実施しました。
- NTTドコモ:音声通話の約90%を規制
- KDDI:音声通話の約95%を規制
- ソフトバンク:約70%を規制
つまり、基地局が無事でも通信がつながらない状況が広範囲で発生したのです。
(出典:総務省「平成23年 情報通信白書」)
震災の教訓から進んだ通信対策
東日本大震災の経験を受け、通信事業者は災害対策を大幅に強化してきました。
代表的な対策としては次のようなものがあります。
① 基地局の電源強化
停電時でも通信を維持できるよう、非常用電源や蓄電池の強化が進められました。
② 移動型基地局の導入
災害時には車両型基地局や臨時基地局を展開し、通信エリアを補完できるようになりました。
③ 復旧優先エリアの明確化
自治体や避難所など、重要エリアの通信復旧を優先する体制が整備されています。
例えば2016年の熊本地震では、約400局の基地局が停止しましたが、役所エリアは約3日で復旧するなど、震災の教訓が活かされた対応が行われました。
さらに近年では、船上基地局やドローン基地局といった新しい通信復旧手段も実用化されています。
それでも通信は止まる ― 近年の通信障害
通信インフラは進化しているものの、通信障害そのものがなくなったわけではありません。
例えば2022年には、国内でも大きな影響を与えた大規模通信障害が発生しました。
ネットワークの複雑化により、小さなトラブルが大規模な輻輳を引き起こし、通信の回復まで長時間を要するケースも増えています。
通信ネットワークは現在、次のような社会インフラとも密接に結びついています。
- ATMや決済システム
- 物流追跡
- 交通情報
- コネクテッドカー
- 気象観測
そのため、通信障害は単なる「電話が使えない」問題ではなく、社会活動全体に影響を及ぼすリスクとなっています。
衛星通信は“万能”なのか
そんななか、近年、災害対策として注目されているのが衛星通信です。能登半島地震時にも避難所の通信等で活用されました。
特に低軌道衛星通信の普及により、これまでより高速で大容量の通信が可能になり、BCP対策として導入を検討する企業も増えています。
しかし、衛星通信にも課題があります。
例えば都市部では、
- ビルによる遮蔽
- 屋上設置の制約
- テナントビルでの設置許可
- 停電時の電源確保
といった運用上の問題が発生する可能性があります。
そのため、衛星通信だけで災害対策を完結させるのは現実的ではない場合もあります。
災害時通信対策の本質は「冗長化」
災害時通信対策で最も重要なのは、
単一の手段に依存しないことです。
例えば通信手段には次のような種類があります。
- 携帯電話回線
- 光回線
- 衛星通信
- 無線通信(MCA無線など)
それぞれに特徴や弱点があります。
つまり、災害時の通信対策は、「どの技術が最強か」ではなく、どの通信手段を組み合わせるかという設計が重要になります。
複数の通信経路を用意し、状況に応じて切り替える。
この通信冗長化こそが、企業BCPにおいて最も現実的で効果的な通信対策と言えるでしょう。
今すぐにできること
東日本大震災から15年。
通信インフラの災害対策は確実に進化しました。
しかし、通信ネットワークが社会のあらゆるサービスと結びついた現在、通信障害の影響はむしろ拡大しています。
災害時通信の議論では、特定の技術が「万能な解決策」として語られることもありますが、むしろ重要なのは、「一つの手段に頼らない通信設計」です。
衛星通信、携帯回線、固定回線など、複数の通信手段を組み合わせる「通信冗長化」。
それが、災害時でも業務を止めないための現実的なBCP対策と言えるでしょう。
参考情報:通信冗長化の構成例
災害時通信対策としては、衛星通信に加え、複数の携帯キャリア回線を組み合わせる方式など、さまざまな設計があります。拠点環境や設置条件に応じた具体的な通信冗長化の構成例については、以下をご参照ください。スカイベリーpro
https://skyberrypro.jp/
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