BCPコラム

投稿日: 2026年7月21日

スターリンクは万能薬ではない?都心オフィスで「繋がらない」を回避する、正しい通信BCPの選び方

※こちらのブログは通信業界歴15年の防災士が書いたものです※

能登半島地震などの被災地でも大活躍し、今や企業の災害対策(BCP)の代名詞ともなりつつある衛星通信「スターリンク(Starlink)」。過去のコラムでもその有用性をお伝えしてきましたが、最近、都心にオフィスを構える複数の企業様から、「実は試してみたら、思ったように繋がらなかった」というリアルなご相談をいただく機会が増えています。

最先端の衛星通信が、なぜ日本のビジネスの中心地で苦戦してしまうのか。今回は、都市部特有の盲点と、本当に機能する通信BCPの考え方について紐解きます。

都心オフィスでスターリンクが遮られる「3つの物理的障壁」

スターリンクが繋がりにくい原因の多くは、その製品の性能不足ではなく、都市部ならではの「設置環境」にあります。スターリンクのアンテナが本来の力を発揮するには、「全方位の空が広く見渡せる環境」が絶対条件だからです。

窓際やベランダでは衛星を捕捉できない

「いざという時は窓際やベランダに出せばいい」と考えがちですが、周囲をビルに囲まれた環境では空の視界が狭すぎます。公式アプリの「視界確認機能」などを使って障害物をチェックすると分かりますが、わずかな軒下やビルの影に入るだけで、衛星との通信は一発で途切れてしまいます。確実に繋ぐには「屋上などの開けた場所」への設置が不可欠です。

ビルの屋上でも「壁」が邪魔をする

せっかく屋上やルーフバルコニーに持っていっても、周囲の防護壁や一段高い隣のビルが障害物になるケースがあります。これを回避するには、専用のマウントやポールを使ってアンテナ位置を高く持ち上げ、周囲の遮蔽物をクリアする工夫が必要です。

都市部特有の「電波の混雑(セル制限)」

千代田区などのオフィス密集地では、災害時でなくても人口や端末が集中します。スターリンクは1つの衛星(またはエリア)でカバーできる通信量に限度があるため、密集エリアでは一時的に回線が混雑し、速度低下や接続不良を起こすことがあります。

「これさえあれば安心」という思考停止が、最大の災害リスク

スターリンクは、従来の衛星通信を過去のものにするほど素晴らしいテクノロジーです。山間部や島しょ部、あるいは地上のインフラが完全に壊滅した被災地においては、これ以上ない強力な命綱になります。

しかし、防災士として警鐘を鳴らしたいのは、「スターリンクを導入したから、我が社の通信BCPは100点満点だ」と安心しきってしまう思考停止です。

災害の形態は一つではありません。

「激しい豪雨で視界が遮られ、一時的に衛星との通信が減衰するかもしれない」

「オフィスの屋上にアンテナを常設・固定する権限(ビルオーナーとの交渉など)がなくて、有事にうまく設置できないかもしれない」

そうした「もしも」を想定しておくことこそが、本当のBCP対策です。

衛星(宇宙)×地上波(キャリア)の「真の冗長化」へ

では、企業はどのように備えればよいのでしょうか。答えはやはり、「異なる性質のインフラを組み合わせる冗長化」にあります。

ビル群などの障害物に弱いが広域災害に強い「衛星通信」と、停電には弱いがビル影や室内でも繋がりやすい「地上の携帯電波(マルチキャリア)」。

この2つは敵対するものではなく、お互いの弱点を補い合う最高のパートナーです。どちらか片方に依存するのではなく、両方の選択肢を持っておくこと。あるいは、平時から手軽に運用できる「地上のマルチキャリア回線」を主軸にしつつ、超・激甚災害へのバックアップを組み立てること。

「これ一つでオールオッケー」という万能薬が存在しないからこそ、自社のオフィス環境に合わせたスマートな二重化、三重化の設計をいま一度見直してみてはいかがでしょうか。

平時から有事まで、足元を支えるマルチキャリア

当社が提供する「スカイベリーpro」は、ドコモ・au・ソフトバンクの3キャリアに1台で対応。ビル内や室内でも、その時最も強い電波を自動でキャッチして安定した通信を維持します。

大がかりなアンテナ設置の手間なく、導入したその日からオフィスの通信BCPを強固にする選択肢として、ぜひスターリンク等の衛星通信との併用も含めてご検討ください。

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