BCPコラム

投稿日: 2026年2月19日

衛星通信・スターリンクはBCPの切り札になるのか?ー災害時通信対策と“通信冗長化”の現実ー

近年、BCP対策として頻繁にあがる「衛星通信」や「スターリンク」。災害時通信対策として衛星通信を検討する自治体や企業が急増しているが、どのような点に気を付ける必要があるのだろうか。

災害時における「衛星通信」活用のいま

近年、「衛星通信」や「スターリンク」という言葉を耳にする機会が増えました。特に能登半島地震をはじめとする大規模災害時に、地上回線が寸断される中でスターリンクが活用された事例が報道されたことで、BCP(事業継続計画)における災害時通信対策として衛星通信を検討する自治体や企業が急増しています。

通信を統括する総務部門や情シス部門、BCP担当部署にとって、「災害時でも確実につながる回線の確保」は最重要テーマのひとつです。その文脈で、地上インフラに依存しない衛星通信は非常に魅力的に映ります。

では、衛星通信は本当に“万能な解決策”なのでしょうか。


衛星通信が注目される背景

スターリンクに代表される低軌道衛星通信は、従来の衛星電話と比べ高速・大容量通信が可能になり、料金も以前より抑えられるようになってきました。データ量あたりの通信費は徐々に下がり、市場拡大を見据えた価格戦略も進んでいると考えられます。

その結果、これまで「特殊用途」「一部の大企業向け」という印象が強かった衛星通信が、民間企業のBCP対策としても現実的な選択肢になりつつあります。

特に山間部や離島、地方都市など、もともと地上回線の選択肢が限られる地域では、衛星通信は非常に有効な災害時通信手段です。地震や水害で光回線が物理的に損傷した場合でも、空を経由する通信は影響を受けにくいという強みがあります。

「地上が止まっても、空からつながる」
この安心感は、BCP担当者にとって大きな魅力でしょう。


都市部では本当に有効か?

一方で、衛星通信の特性を冷静に見る必要もあります。

衛星通信は、その仕組み上「空に向かって広く開けた環境」が必要です。アンテナは衛星との間に遮蔽物が少ない環境でなければ安定した通信ができません。ビルが密集する都市部では、設置場所が屋上に限定されるケースも多く、必ずしも理想的な通信環境が確保できるとは限りません。

実際、海岸近くの開けた場所では問題なく使用できていたものの、都内オフィスへ移設したところ安定しなくなったという声もあります。都市部では高層建築物や周囲の遮蔽物の影響を受けやすい点は見逃せません。

また、自社ビルを所有する大企業であれば屋上設置も比較的容易ですが、テナントビル入居企業の場合、アンテナ設置の許可や配線工事など、調整事項は少なくありません。単に「導入費用が下がった」という理由だけで判断できるものではないのです。


コストと実効性は別問題

衛星通信の導入を検討する際、比較されるのは主に以下の観点でしょう。

  • 初期費用・月額費用
  • 通信速度・データ容量
  • 災害時の稼働実績

しかし、BCP視点でより重要なのは「自社環境で確実に機能するかどうか」です。

・設置スペースは確保できるか
・停電時の電源確保はどうするか
・屋上設置の場合、機器保守は誰が行うのか
・通常時はどう運用するのか

これらを具体的に検討しなければ、いざというときに“使えない設備”になってしまう可能性もあります。

災害時通信対策は、「理論上つながる」ことよりも、「自社で確実に運用できる」ことの方がはるかに重要です。


BCPにおける通信設計の本質

BCPにおける災害時通信対策は、単一の強力な手段を導入することではなく、「通信の冗長化」をどう設計するかにあります。

衛星通信は確かに有効な選択肢のひとつです。
しかし、都市部に拠点を置く企業や多拠点展開する法人では、携帯電話回線など地上インフラとの組み合わせも視野に入れるべきでしょう。

携帯電話回線は、三大キャリアが災害対策を強化しており、基地局の無停電化や移動基地局の投入など冗長化が進んでいます。エリアカバーも広く、平時からの運用が容易という強みがあります。

衛星通信か、携帯回線か。
二者択一で考えるのではなく、「どう組み合わせるか」という視点こそが、現実的なBCP設計につながります。


“平時も運用できる”ことの重要性

災害時通信対策で見落とされがちなのが、「平時も運用できるか」という観点です。

非常時だけ使う設備は、操作に慣れていない、設定が古い、電源管理が不十分などの理由で、いざというときに機能しないケースが少なくありません。

BCPは机上の計画ではなく、実際に使える仕組みでなければ意味がありません。

・平時から通信経路として活用できるか
・自動で切り替わる仕組みになっているか
・特別な訓練を必要としないか

これらの視点で通信設計を見直すことが、真に機能する災害時通信対策につながります。


おわりに

衛星通信やスターリンクは、BCPにおける災害時通信対策として大きな可能性を持つ技術です。特に山間部や地方拠点では、有効な選択肢となるでしょう。

しかし、都市部やテナント環境では、設置条件や運用面まで含めた慎重な検討が不可欠です。

重要なのは、「どの技術が優れているか」ではなく、「自社にとって最適な通信冗長化設計は何か」を考えることです。

単一の解決策に依存するのではなく、地上回線と衛星通信を含む複数手段の組み合わせを前提に、平時も運用できる仕組みを構築すること。それが、実効性のあるBCPの本質といえるでしょう。


参考情報:通信冗長化の構成例

災害時通信対策としては、衛星通信に加え、複数の携帯キャリア回線を組み合わせる方式など、さまざまな設計があります。拠点環境や設置条件に応じた具体的な通信冗長化の構成例については、以下をご参照ください。

スカイベリーpro
https://skyberrypro.jp/

BCPコラム

スカイベリーproについて
ご質問がございましたら
お気軽にお問い合わせください。