BCPコラム

投稿日: 2025年12月9日

【コラム⑥】事例でわかる ― 冗長化で“止まらない通信”を実現した企業・自治体のリアル

※こちらのブログは通信業界歴15年の防災士が書いたものです※

本シリーズでは、企業が直面する7つの通信リスクと、事業を止めないための冗長化設計・実践事例をわかりやすく紹介します。

通信冗長化は、単に「通信を強くする」ための施策ではない。
実際の現場では、売上、信用、事業継続性、そして安全そのものを左右する極めて重要な基盤になっている。

このコラムでは、多キャリア・多回線冗長化が企業や自治体の現場でどのように「効いた」のかを、実例を中心に詳しく解説する。


 イベント会場 ― “通信集中” のピークでも発券が途切れない

大規模イベントで最も起こりやすい通信トラブルが「輻輳(混雑による通信遅延)」だ。
多くの来場者が同時にスマホを利用することで、特定キャリアの回線が瞬間的に不安定になる。

 ■ 課題

  • 発券端末がつながらない
  • 決済に時間がかかる
  • 来場者の列が長時間伸びる
  • オペレーションが混乱し、スタッフ負荷が上昇

 ■ 冗長化導入後

多キャリア自動切替を導入したイベントでは、
初日だけで1,100名超の来場者対応を途切れなく実施 することができた。

回線Aが渋滞 → 回線Bへ瞬時切替 → 状況が落ち着けばAへ戻る
という無停止の通信が実現し、ピーク時でも遅延なく発券できた。

 ■ ビジネスインパクト

  • 発券遅延の解消 → 顧客満足度の向上
  • スタッフ負担の大幅軽減
  • 会場オペレーションの安定化
  • クレーム減少と安全確保

イベント運営会社では「冗長化なしの通信は、もはやイベント運営では成り立たない」という意見も増えている。


山頂施設・アウトドア拠点 ― 天候に左右されない決済を確保

山岳地帯や自然公園内の宿泊施設では、通信環境が常に安定しているとは限らない。

特に、

  • 天候(雨・雪・強風)
  • 地形
  • 周囲の遮蔽物

によって、電波状況が日単位で変わる。

 ■ 課題

  • 決済端末がつながらず会計ができない
  • 混雑時にレジが停止して長蛇の列
  • スタッフの負担増と顧客不満

 ■ 冗長化導入後

多キャリア冗長化によって、天候悪化時でも自動的に最適なキャリアへ切り替わることで、
決済断絶や機会損失を大幅に軽減 を達成した。

■ ビジネスインパクト

  • 売上の安定化
  • 顧客離れの防止
  • 運用の安心感向上
  • 観光シーズンの収益最大化

山岳観光業では、通信冗長化は「売上を守る投資」として認識が広がりつつある。


 空港店舗・大型商業施設 ― “絶対に止められない” 決済システム

空港や商業施設の決済端末は、1分停止するだけで大きな損失に直結する。

ある空港の店舗では、台風による電波不調やキャリア障害に備え、冗長化構成を導入した。

 ■ 導入後の効果

  • 天候不良時にもPOS通信が安定
  • 決済レーンが混雑しない
  • 海外客含むキャッシュレス需要に対応
  • 「通信不安 → 現金のみ」に戻す必要がなくなった

空港はインバウンド客のキャッシュレス比率が非常に高いため、
通信安定性は売上に直結する“生命線” である。


 医療MaaS・救急 ― “命をつなぐ通信” の現場で役立つ

遠隔医療サービスでは、通信が止まれば診療そのものが成立しない。
移動型医療車両(MaaS)は特に通信品質が不安定になりやすい。

 ■ 課題

  • 映像診療が途切れる

  • 患者データ送信が中断
  • 遠隔医師との連携が不能

 ■ 冗長化導入後

  • 通信が安定
  • 医療データのリアルタイム連携が可能
  • 災害医療での応用も期待

遠隔医療では、
“通信=命を守るインフラ”
という認識が生まれている。


まとめ:事例が語る「止まらない通信」の価値

これらの実例が示すのは、通信冗長化は

  • 売上
  • 顧客満足
  • 信頼
  • 安全
  • オペレーション効率
  • 地域レジリエンス

を同時に守るための 経営投資 であるということだ。

通信はもはや“コスト管理の項目”ではなく、
企業価値を守る戦略資産 である。

次回のコラム⑦では、冗長化をどのように導入すべきか、企業・自治体の最適なステップについて整理する。

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